召喚Ⅳ

夕方、新都の路地で動く影があった。

―――ガサゴソガサ

なにかをずっと捜していたのだろう。
所々汚れている男がパートナーらしき少女に、

「そっちは見つかったか？●●●」
「見つかってたら、ここまで汚れてないわよ！
　そっちはどうなの？」
「こっちにもないわ。
　―――喧嘩したのがここいらだからこの辺りだと思ったんだが―――」
男がブツブツ言うのを余所に、

「ねぇ、●●●。やっぱり、●●●達にも手伝って貰おうよ。」
　”あたしもうつかれちゃったわ”と少女はいう。

　だが男は、

「いや、●●●は剣士【セイバー】でこういう事には向かないだろ。だから、盗賊【アサシン】の●●●を喚んだが―――」

「それなら、私じゃなくても
　持ち主で魔術師【キャスター】の●●●を喚んで、遠くからでも探せる魔具【アイテム】を借りればいいでしょ！」
怒り口調でいいながらも必死に探してくれるのだった。

「あのな、それが出来れば何の苦労もしないっての、それにもし、潜入用にと借りた魔具【アイテム】を本当はなにに使おうかばれたら―――おれは―――」

がっくりとうなだれる男を余所に、

「あぁ、もう！うじうじしない！
　それはアンタの自業自得でしょうが、私だって理由聞いて呆れてるんだからね。
　次行くわよ。次。他に行った所は？」
「他って行ったらもう●●しか―――」

「なら、そこに行くわよ。一旦戻るから、着いたら喚んでよ。」
そういうと、少女は男に近寄り、どこに消えてしまった。
”行くか”と言って男も”学校”へ向けて移動するのだった。

／

朝に永琳から話を聞いた凜がそのおかしな物を調査するというので、
夕方―――学校に誰も居なくなるであろう時間を選んで、学校に来ていた。

「鈴仙。本当にここにその”おかしな物”があるの？」「確か―――ここの溝に―――あれ？確か、朝はあったのですが。」

鈴仙が”おかしいなー”と探してるのを余所に、
私と永琳は、

「永琳、本当に貴女はクラスじゃなくて名前のほうで呼んでてもいいの？」
「はい、ますたー。
　私が召喚されたのなら、ほかの知り合いも召喚される場合があります。
　その際、出来るだけクラスはわからない方が戦いやすいですから」
「あともう一つね。鈴仙は本当に”おかしなもの”を見たんでしょうね？」
「私はその場にいなかったので真偽は分かりません。
　が、幻想郷にいた三大真面目王の一人なのであの子があったというなら本当にあったと思います。」

それを聞きながら”うわー、本当よく信頼してるわね。
　私もあの子と離れ離れになっていなかったらそうなっていたのだろうか―――”

「もし、嘘をついていると分かった場合―――おしおきですがね。」

なんて言いながら隣でうふふと清々しく笑われると私の事ではないけど怖い―――

それから少しして、私はため息を吐きながら、

「鈴仙。」
「はい、なんでしょう凜さん？」
「まだ見つかってない魔具の形だけど、本当に゛回せる゛様な構造してて、゛青っぽくて゛、
゛卵゛みたいな形してたのよね？」

こくりと鈴仙はうなずきまた黙々と探す作業に戻って行った。

「ますたーなにか心当たりでもあるのですか？」
「いえ、ないわ。
ただ、誰かのサーバントの物かしら？と思ったけど、
普通落とすなんてまぬけな事しないわよね。」

と言ってから、あはははと笑った。

「―――悪かったな、普通落とさない物落として。」

その声に、はっとし後ろをみると筋肉隆々の男が両刃の剣を持ち、
その傍らに「私がいて良かったわねー」と言っている少女がいた。

「見た所―――あんたとそこのお嬢ちゃんはサーヴァントとマスターみたいだな。」

「そういう貴方達もサーヴァントみたいね。
そこのお嬢さんは分からないけれど、貴方は剣を持っているという事はセイバーかしら。」

「そういう、あんたは理性がある。
という事はバーサーカーじゃねぇな。」
「物腰から言って、同業者【アサシン】って訳でもなさそうだしね。」

二人が永琳の事を推測していた。
二人の会話から少女がアサシンというのはわかったが、

”なにか、おかしい。
そもそも、サーヴァントが２体一緒に行動しいるのに、争っていない。
同じ魔術師が召喚したということもありえるが、戦力半減になるのでそんなリスク犯す方がおかしい。”

私が思考を張り巡らせるのをよそに、

「私は月の姫蓬莱山かぐやの従者にして
　『月の頭脳』の名を持つ者。
　名を八意永琳という。「な、なに言ってるのよえいr」”キャスター“として、限界しています。
さ、こちらが名乗ったのだからそちらも名乗って貰いましょうか。
まさか、剣に生き剣に死んだ騎士さま【セイバー】ともあろうものが、名乗りに答えないはずないわよね。」

なんて、答えるのだった。

／

剣を持った大男と傍らにいる小さな少女はまだこちらに気付いて無かったようだ。

師匠が言っていた通り、私の気配は能力を使わない限り師匠の気配に紛れて分からないらしい、
これならばあの大男の不意をついて攻撃することも可能なのだが、

“鈴仙、なにかあったらますたーを連れて逃げなさい。”
そう、言われていた。

確か、合図が―――

／

私の近くでますたーが消えた。
消した者は分かっていた。

何せ、私が指示を出したのだから姫ではないけれど、相手が慌てるのはいつみても面白いモノね。

「さて、
私のますたーが居なくなったわこれで本気を出して殺り合えるわね。」

次の言葉を言ったらどういう顔をするかしら、

「本気をだして頂戴ね。“キャスター”さん。」

そういって、私は薄く笑うのだった。